DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2023.12.15

二重切開

上まぶたたるみ切除

二重埋没

眼瞼下垂手術

まぶたの重さ

Dr Kuroda

「まぶたが重い感じがする」という訴えがあります。

「重い」とは患者様の主観的な表現なので、何が「重く」感じさせているのかを医療者は客観的に判断する必要があります。今回は、重さの原因となる状態とその治療法について解説します。

眼瞼下垂

まぶたが重いといえば、最初に思いつくのは眼瞼下垂ではないでしょうか?眼瞼下垂とは、まぶたの開きが悪く、黒目の見え方が小さい状態です。眼瞼下垂が進行してくると頭痛、肩こりといった様々な不定愁訴が生じてくることがあります。

治療は眼瞼下垂手術で、挙筋前転という処置をして目を開ける筋肉の動きが瞼板に伝わりやすくすることでまぶたの開きを改善させます。

眼瞼下垂手術のモニター患者様の症例を見てみましょう。

術後はまぶたの開きが改善し、黒目の見え方が正常になっています。術前のようにまぶたの開きが悪い状態だと、「重い」という自覚症状になります。

余談ですが、私の母校の信州大学は眼瞼下垂治療のメッカで、学生時代の形成外科の講義は眼瞼下垂がメインでした。試験に眼瞼下垂で交感神経が亢進する機序を説明させる記述問題が出るなど、独自路線だった記憶があります。

一重まぶたによる偽性眼瞼下垂

一重まぶたの人は、黒目の見え方が小さくとも全員が上記の眼瞼下垂とは限りません。二重まぶたの人とは異なり、目を開けた際に皮膚がまつ毛より下方にずり落ちてきます。すると、まぶたがしっかりと開いているにも関わらず黒目が隠れてしまいます。まぶたが開いているにも関わらず視界の上方は皮膚で邪魔されている訳ですから、まぶたが「重く」感じます。

治療は通常の二重形成で良いのですが、皮膚の余りがある場合には埋没法よりも切開二重の方が良いと思います。一重まぶたの人は軽度の先天性眼瞼下垂が潜んでいることも多いので、眼瞼下垂手術が必要か、二重形成のみで大丈夫かは診察で判別する必要があります。

偽性眼瞼下垂の状態であったモニター患者様の症例を見てみましょう

一見、眼瞼下垂のように見えますが挙筋前転はせずに二重手術だけで黒目がよく見えるようになっています。術前からしっかりと目は開いていたのですが、皮膚が被さることで黒目が隠れていたことがわかります。

まぶたの皮膚が伸びてきている

加齢に伴いまぶたの皮膚が伸びてくることは避けることが出来ません。ご高齢の方の瞼を思い浮かべてみて下さい。目尻の皮膚が被さって三角目となり、伸びたまぶたの皮膚を引き上げるために眉毛を上げて額にシワが寄った表情をしていませんでしたか?

まぶたのたるみの進行は紫外線の影響やまぶたを擦る習慣などで個人差がありますが、早い方では30代後半あたりからまぶたが「重い」と感じることがあります。無意識に眉毛を挙上するようになると、常に前頭筋が緊張している状態ですから重さや疲労感、頭痛を感じることになります。

治療は眉下で伸びた皮膚を切除することが一般的です。二重ラインで皮膚を切除する方法もありますが、二重ラインで皮膚を多く切除すると如何にも整形っぽい不自然な二重になってしまいます。

眉下切開のモニター患者様の症例を見てみましょう。

まぶたの皮膚の余りが原因で眉毛を挙上するクセがついています。眉下で伸びている皮膚を切除することで眉毛挙上のクセが改善しました。

埋没法による影響

挙筋法による眼瞼下垂症状はよく知られた合併症ですね。過去のコラムでも解説しています( https://ro-clinic.com/doctors_column/9453/ )。繰り返し埋没法を受けていると、皮下に瘢痕が生じます。挙筋腱膜やミュラー筋といったまぶたを開ける組織周囲に瘢痕が生じると、まぶたが「重い」と感じることがあります。

モニター症例を見てみましょう。

複数回の埋没法の既往がある方です。切開二重の際に、埋没糸を抜去し挙筋腱膜を瘢痕組織から丁寧に剥がしました。挙筋前転は行っていませんが、術後の目の開きが改善しています。

「まぶたが重い」という訴えはこれらの原因が複数関係していることもあります。

「重さ」の原因を分析し、適切な治療方法をご提案出来るよう心掛けて診療しております。

副院長:黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。