DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.06.07

眼瞼下垂手術

眼瞼下垂手術の適応

Dr Kuroda

眼瞼下垂とは目を開けた時に上まぶたが正常の位置より下がった状態のことです。

正面を見ている時の黒目の中心から上まぶたまでの距離が3ミリを下回ると眼瞼下垂と診断されます。

眼科や形成外科などで保険診療の眼瞼下垂治療を行う場合と異なり、美容外科で眼瞼下垂の手術を行う場合には眼瞼下垂の定義を満たしていなくても手術適応となることがあります。

・眠そうな目元をぱっちりさせたい
・上まぶたの凹みを改善させたい
・眉毛を上げる癖を改善させたい
・二重幅を狭めたい

などのケースでは、眼瞼下垂の手術を行うことがあります。

では、目元をぱっちりさせたい希望がある人に対して必ず眼瞼下垂手術が必要かと言えば、そうとも限らないのが美容外科の難しいところです。

一重まぶたの人の場合には、目を開けた時に上まぶたの皮膚が被さってくるので実際よりも黒目は小さく見えています。二重になるだけで現状よりは黒目は大きく見えるようになるのでそれで満足される場合もあります。

さらに切開法で二重を作成する場合には開瞼抵抗と言われる目を開ける際に抵抗となる組織の処置をするので、眼瞼下垂手術を行わなくても目の開きが改善するケースも珍しくありません。

二重まぶたの人の場合には、黒目の見え方に不満があれば眼瞼下垂手術の適応となります。ですが、埋没法で二重になっている場合には埋没法の糸を抜去して開瞼抵抗の処理をしたり、不適切に広い二重を作成されている場合には適切な二重幅に狭めることにより、眼瞼下垂手術をしなくても目の開きが改善することがあります。

美容外科において眼瞼下垂手術が必要か否かはケースバイケースで判断することになります。ですから、患者様から「Aクリニックでは眼瞼下垂手術が必要と言われたけれど、Bクリニックでは必要ないと言われた。何が本当か分からなくなりました」という声をよく耳にしますが仕方がないことだと思います。

明らかに黒目の開きが悪い場合には手術適応の判断は難しくありませんが、悩むのは定義的には眼瞼下垂とは言えないけれどちょっと眠そうに見える目元の場合です。開瞼抵抗の処理や埋没糸の抜去をして術後に目の開きが改善するかどうかは事前に予測することが出来ません。そのため、目の開きの改善を確実に希望する場合には眼瞼下垂手術をすることになりますし、あわよくば改善すれば良いというケースでは通常の二重切開手術を行うことになります。

私の場合には、

・正面を見ている時の黒目の中心から上まぶたまでの距離が3ミリを下回っている
・眉毛挙上のクセが強くシミュレーションをしても二重ラインで皮膚が折れない
・客観的に分かる目の開きの左右差がある
・眠そうに見える目元で意識的に目を開けたくらいの黒目の見え方が好み

といったケースを眼瞼下垂の手術適応としています。

なお、正常な開瞼がある人が更にデカ目にしたいという理由での眼瞼下垂手術はあまりお勧めしておりません。カラコン映えするような過剰な目の開きにすることで

・ドライアイの悪化
・乱視の悪化

などの不具合が生じるリスクがあり、過開瞼の修正手術は難しいからです。

眼瞼下垂の手術をした場合の術後変化としては

・黒目の露出が多くなることで目に光が入ってパッチリ見える
・目を開けるのが楽になる
・眉毛挙上や上まぶたの陥凹、下三白目の改善
・頭痛や肩こりなどの随伴症状の改善

が期待できます。

術後変化の中で少し厄介なのは、殆どのケースで術後に眉毛の位置が下がることです。どの程度眉毛の位置が下がってくるのかは予想できません。眉毛の位置の上げ下げは二重幅に影響するので、機能面だけでなく見た目も整える必要がある美容外科の場合には、仕上がりの二重幅の約束ができないというのは術者にとっても患者様にとってもストレスになります。

まぶたが厚ぼったい人の場合には、目の開きが良くなって眉毛の位置が下がってくるとより厚ぼったさが強調された目元になってしまうケースもあります。

美容外科での眼瞼下垂手術は単純に目の開きのことだけを考えれば良いわけではないので、最終的には患者様の希望を伺った上で目元を診察しなければ手術適応があるかどうかは決めかねることになります。

最後に、いくつか眼瞼下垂手術のモニター症例をご覧にいれます。

この方は黒目の中心から上まぶたまでが3ミリ以下で眼瞼下垂の定義を満たしているケースです。

このような典型的なケースでは手術適応を迷うことはないでしょう。

この方は目の開きに明らかな左右差があります。眼瞼下垂がある目には上まぶたの陥凹も認めます。術後は目の開きが改善し、眉毛が若干下がって上まぶたの陥凹が改善しています。

この方は黒目の中心から上まぶたまでが3ミリ以上あります。このくらいのケースでは眼瞼下垂手術をするかしないかで意見が分かれると思います。眼瞼下垂手術をすることによってパッチリとした目元になっています。

眼瞼下垂手術は満足度の高い手術ではありますが、難易度の高い手術ですし症例によっては思ような開瞼が得られないこともあります。手術適応の有無については医師と相談の上で慎重に判断するのが良いでしょう。

 


 

さて、このコラムを執筆して丸1年が経過しました。

初回のコラムで

・毎週更新
・年間52本のコラム

という目標を掲げました。

実は今回のコラムが52本目となります。

深く考えずに目標を設定してしまったのですが、やってみると毎週新作コラムを作成するのは中々の負担で、休日や旅行先でもコラムの原稿を執筆している1年間でした。

ですが、コラムを読んでカウンセリングに来てくださる患者様がいたり、「コラム勉強になりました」と声をかけて下さる方がいたお陰で目標の52本を達成することが出来ました。InstagramやYouTubeなど映像で気軽に情報が得られる時代において、わざわざ活字のコラムを読む人なんかいるのかな?と懐疑的な気持ちもありましたが、それなりに反響があったことからコラムを執筆して良かったと思っています。

まるで最終回のような締めになってしまいましたが最終回ではありません。

ですが当初の目標を達成ということで少し更新をお休みさせて頂きます。

お休みした後に、今より負担の少ないペースでコラムを更新していく所存です。

今後とも、R.O.クリニックおよびコラムをよろしくお願い致します。

副院長 黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。