DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2023.09.15

二重埋没

私の採用している埋没法

Dr Kuroda

いよいよ埋没法最終回です。
まさか埋没法の話題で4週も続けるとは思っていませんでした。

今までは、埋没法について俯瞰的に解説してきました。
最終回は、私が採用している埋没法とその理由を説明します。

挙筋法?瞼板法?

基本的には「瞼板法」で行っていて、必要に応じて挙筋法も行っています。前々回のコラムで解説したように、瞼板法も挙筋法もメリットデメリットがあります。挙筋法は大変素晴らしい方法だと考えていますが、眼瞼けいれんの合併症が気になってしまいます。

瞼板の歪みや角膜損傷といった瞼板法のリスクは気をつけて手術を行えばほぼ避けられる合併症であるのに対して、眼瞼けいれんは確実に避ける方法がない点が心配です。そのような理由で、基本的には瞼板法で行っています。

挙筋法によって眼瞼けいれんが生じるリスクについての正確なデータはありませんが、仮に1%程度の可能性だとしても沢山手術を行えばいずれは起こってしまいます。私は手術に関しては慎重なタイプの性格なので、出来るだけ瞼板法で行うようにしています。

ですが、あえて挙筋法で行うケースもあります。一番多いのは、瞼板法では作成が難しい幅広の二重を希望されるケースです。蒙古ひだがある人が平行型二重を希望している場合には、目頭に近い瞼板は先細くなっていますので、瞼板法で対応できないときは目頭側のみ挙筋法で行うこともあります。以前に他院で埋没法を受けていて既に瞼板に変形が見られるケースでも、瞼板の変形を悪化させないために挙筋法を行うこともあります。

点固定?ループ固定?

糸の通し方は「ループ固定」を採用しています。点固定の方が手技としてはシンプルで、複数の糸で点固定をしてあげれば、狙った二重デザインから外れにくいというメリットはあると思います。ですが、ループ状に糸を通してあげる方が面で皮膚を引き込める、点固定よりも外れにくい、というメリットがあるのでループ固定をしています。

表留め?裏留め?

糸玉の位置は「表留め」で裏留めは行っていません。

裏留めは結膜側から糸を通して糸玉が結膜側にくる方法です。皮膚に傷が残らない、糸玉が浮かないなどのメリットがあるので、採用しているクリニックも多いです。患者様からしたらメリットが大きいように感じるのではないでしょうか?

私が表留めを採用している理由は2つです。

一つめは、埋没糸を抜去したいときに抜去が容易であるという点です。二重ラインが気に入らない、違和感を感じるなどのトラブルの際に埋没糸を抜去する必要があるかもしれません。その際に結膜側からの裏留めでは、原則的には結膜側から抜去することになります。確実に抜去できる先生であれば裏留めを行っても良いと思いますが、ミュラー筋にダメージを与えることなく確実に埋没糸を抜去することは難しいと考えているので裏留めは行っていません

二つ目は、糸玉はそもそも悪者扱いするような存在ではないと考えているからです。埋没糸を抜去する際には、糸玉が周辺組織と強く癒着しているのを確認できます。糸玉を見つけて周辺組織から外してあげれば、残りの糸はスルスルっと抜去が可能です。つまり、糸玉があるからこそ埋没糸は緩まずに二重がキープ出来ているのです。毎日の何千回ものまばたきに耐えて支えてくれているのに、皆んなから忌み嫌われている、そんなちょっと可哀想な存在が糸玉なのです。糸玉がちょうど良い深さの皮下にある方が、結膜側にあるよりも二重が長持ちすると考えています。

もちろん、表留めでも糸玉が目立って良いとは考えていません。出来るだけ、糸玉が目立たない工夫をしています。糸玉は結ぶ回数が増えるほど大きくなります。3~5回ほど結ぶことが多いですが、私は3回結びで解けない方法を採用しています。糸玉は皮膚が厚い人ほど透けにくく、皮膚が薄い人では透けやすくなります。通常は7-0という太さの糸で埋没法を行いますが、皮膚がかなり薄く糸玉が目立ことが予想される人では、より細い8-0という太さの糸を使用することもあります。7-0の方が二重の持ちは良いのですが、皮膚が薄い人はそもそも二重の持ちが良いので8-0の糸でも特に問題ありません。

ちなみに、一本の糸に複数の糸玉を作る方法は固定力という意味では優れた方法ですが、抜去する際にシンプルに行えないので私は一本の埋没糸に対して糸玉は一箇所で行っています。

何針固定?

入れる糸の本数は、瞼の厚みや希望する二重の形に応じて1~3本です。糸を入れる本数が増えるほど価格が上がるので、クリニック経営を優先すれば全員3針固定が良いのですが、埋没糸と言えども瞼にとっては異物なので必要最小限の本数で提案するように努めています。

明らかに二重クセがつきやすい患者様に対して、「あなたはクセがつきにくいから」などと説明して高額の埋没法を提案するクリニックもあって驚くやら感心するやらですが、私は良心の呵責に耐えられないのでそのようなアップセルは行いません。

これにて、一連の埋没法のコラムは一旦終了です。

一般の方にはやや難しい内容が続いてしまったので、次回はもう少し肩の力を抜いて読める内容にしたいと思います。

次回のコラムで、またお会いしましょう。

副院長 黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。