DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.01.19

その他

局所麻酔の痛み

Dr Kuroda

手術と局所麻酔は切っても切り離せない関係です。

手術も怖いけれど局所麻酔の痛みが心配という人は多いのではないでしょうか?

一方、当院で手術を受けて頂いた患者様からは

「麻酔が痛くなかった」
「他のクリニックでは麻酔が痛かったのにROでは大丈夫でした」

と言っていただくことが多いです。

今回は局所麻酔の痛みを少なくする為に当院で行っている工夫について解説いたします。

工夫①:注射針の細さ

当院では局所麻酔を打つ際の注射針に極細の針を採用しています。当院で使用している33G(ゲージ)の針と一般的に細い針として流通している27Gと25Gの針を比べてみましょう。ちなみにゲージは数値が大きくなるほど針は細くなります。

健康診断などで採血に使用される23Gと比べると33Gの細さがより伝わるでしょうか?

比べてみると33Gの針がいかに細いかお分かりいただけると思います。当然、針が細い方が痛みが少なくなります。

工夫②:麻酔液のpH

局所麻酔に使用する薬剤はpHが酸性になっています。局所麻酔として使用する際に少量の炭酸水素ナトリウムを混ぜてpHを中性に近づけています。注射は針を刺される痛みに加えて、組織に薬剤が入るときの痛みもあります。pHを中性に近づけることで、組織に薬剤が入るときのシミるような痛みを少なくすることができます。

工夫③:表面麻酔

針を刺す部位にあらかじめ麻酔クリームを塗ります。麻酔クリームによって皮膚の感覚が鈍くなるので、注射針を刺すときの痛みを少なくすることが出来ます。

工夫④:麻酔液の温度

局所麻酔液は冷蔵庫で保管しているので、冷蔵庫から出した直後はキンキンに冷えています。冷えた麻酔液は注入されると痛みが強いので、麻酔液が常温になるまで待ってから注入するようにしています。

工夫⑤:針を刺す部位

皮膚の知覚はどこでも同じではありません。痛みを感じやすい部位もあれば、比較的痛みを感じにくい部位もあります。まぶたであれば目尻側は目頭側よりも痛みを感じにくので、必ず目尻側から注射をするようにしています。一箇所に局所麻酔をしてしまえば、二箇所目以降の針刺しは局所麻酔の効いている部位から刺せるので針刺しの痛みは殆ど感じません。

工夫⑥:皮膚を伸ばす

注射で一番痛いのはやはり針が皮膚に刺さる瞬間です。針を刺す部位の皮膚を指で伸ばすことで、針が皮膚の痛みを感じるポイントに当たる確率を下げることが出来ます。また、皮膚を伸されている感覚が針の刺さる痛みを和らげる効果もあります。

工夫⑦:麻酔液の注入速度

インフルエンザの予防接種などで1秒くらいでピュと注入されて痛かった記憶がある人は多いのではないでしょうか?薬剤の注入速度が早いと組織が急激に押し広げられるので強い痛みを伴います。痛みを少なくする為には、極力ゆっくり薬剤を注入することで大幅に痛みを減らすことが可能です。私はインフルエンザの予防接種は自分自身で打つのですが、これ以上ゆっくり注入出来ないという程にゆっくり注入しています。1秒で打つ時と比べると痛みはかなり少なくなります。

工夫⑧:ブロック麻酔

顔の知覚神経は骨に空いている穴から皮下に出てきます。神経が骨から出てくる周辺に麻酔をしておくと、少ない麻酔液で広範囲の皮膚に麻酔を効かせることが出来ます。ブロック麻酔は鼻や口元、額、下まぶたの手術の際には特に有効です。最初にブロック麻酔を行うことで、その後の局所麻酔の痛みを大幅に減らすことが可能です。

工夫⑨:声がけ

バファリンの「半分はやさしさで出来ている」は有名なキャッチフレーズですが、局所麻酔の痛みを感じさせない工夫も半分はやさしさで成り立っていると思います。緊張してガチガチな人はできるだけ緊張が解れるような声がけを私からもナースからも行っています。皮膚に触れるときや針を刺すときなども適宜声がけをして、突然意図せぬ不快な感覚を与えないように細心の注意を払っています。

局所麻酔については研修医の頃に

「局所麻酔で痛い思いをさせてしまうと、その後の手術が上手く行っても患者様からの評価は下がってしまう。誰でも最初は手術が下手なのだから、せめて麻酔だけは痛くなかったと言ってもらえるように工夫をしなさい」

と指導医から教えられました。

かれこれ20年近く前に言われた言葉ですが、今もその教えを肝に銘じて局所麻酔を行っています。痛みゼロは難しいかもしれませんが、局所麻酔の痛みが「想像していたよりも痛くなかった」と思ってもらえるよう努めていますので、安心して局所麻酔を受けて頂ければと思います。

副院長 黒田大樹

#美容外科よもやま話シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。