DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.01.13

二重切開

切開二重の内部処理について

Dr Kuroda

稀に患者様から

「切開二重ではどのように内部処理をしていますか?」
「切って縫うだけで内部処理をしないクリニックがあるってネットで見ましたが、先生はちゃんとやっていますか?」

などの質問をされる事があります。

ドクター同士のディスカッションであれば、お互いに医学知識と瞼の解剖という共通認識があるのでスムーズに説明出来ます。

患者様の場合にはどの程度知識があるか分かりませんし、どこまで詳しく知りたいのかも分からないので説明に苦慮します。

最近も同様の質問をカウンセリングで頂く機会がありましたので、コラムで解説をしておきます。

イラストを用いて視覚的に理解出来るようにはしましたが、割と専門的な内容になってしまいますので興味のある方が読んで頂ければと思います。

最初に上眼瞼の解剖のイラストです。一般の人向けに簡略化してあります。

二重の手術とは、まぶたを開く際に眼球に沿って引き込まれる眼瞼挙筋の力を皮膚に伝えるバイパスを作成するのが目的となります。

では、手術の流れに沿って説明します。

皮膚切開~眼輪筋切開

メスで皮膚切開を行います。レーザーや電気メスで切開を行う方法もありますが、創縁に火傷を作成するのが嫌なので私はメス派です。一気に眼輪筋まで切開を加える方が時短になりますが、私は眼輪筋には傷をつけないように皮膚のみを切開します。眼輪筋は表面に血管が沢山あるので、それらの血管を最初に止血処理をしてから眼輪筋を切開するようにしています。眼輪筋内にも血管が走行しているので、眼輪筋を切開する時も少しずつ切開をしてなるべく出血させる前に血管を止血処置してから切開を加えています。この工程を丁寧に行うことで、手術後の内出血や腫れが少なくなると考えています。

皮下の剥離、埋没糸抜去、眼輪筋処置

眼輪筋の直下で睫毛側に剥離を加えます。この工程で埋没法の糸がある場合には出来るだけ抜去するようにします。埋没法をしている人は、瞼板前組織と眼輪筋の間に癒着があるので、その癒着も全て外して睫毛側の組織がスムースに動くようにしています。睫毛側の眼輪筋は極力温存しています。眼輪筋を切除した方が緩みにくい強固な二重となるのですが、一方で動きの少ないペタッとした二重になることや修正手術が難しくなるなどの弊害があります。ブジーで二重のシミュレーションをした際に二重のクセが付きにくい人の場合には、適切な量の眼輪筋を切除しています。

眼窩隔膜の開放と反転

眼窩隔膜を皮膚切開よりも眉毛側で切開をして反転させます。眼窩隔膜の開放が中途半端だと開瞼抵抗となるため、目頭側と目尻側までしっかりと展開します。眼瞼挙筋の動きがスムースに伝わる十分な長さのある反転した眼窩隔膜を準備することが大切です。

開瞼抵抗の処置

眼瞼挙筋腱膜を上から抑え込むように下横走靭帯があります。この下横走靭帯は個人差が大きいのですが、発達している場合には目を開ける動きの邪魔となるので切除しています。

埋没法を挙筋法で行われていたり上まぶたの脱脂術を受けている場合には、眼窩脂肪と眼瞼挙筋腱膜の間に蜘蛛の巣のような瘢痕組織がびっしりついていることがあります。この蜘蛛の巣のような組織は目を開ける動きの邪魔となるので、眼窩脂肪と眼瞼挙筋腱膜の間も十分に剥離して眼瞼挙筋腱膜の動きがスムースになるようにします。

重瞼固定

先ほど反転した眼窩隔膜を適切な長さに切除して調整します。

眼窩隔膜を長めに反転しておくことで、切除する眼窩隔膜と同時にある程度ROOFも切除することができます。反転した眼窩隔膜と睫毛側の皮下を吸収糸で3~5箇所固定します。重瞼固定の内部処理には、瞼板に固定する方法、瞼板前組織に固定する方法、眼瞼挙筋腱膜に固定する方法などがあります。私の採用している反転した眼窩隔膜を固定源とする方法は、閉瞼時の食い込みが少ない自然な仕上がりになるメリットがあります。一方、瞼板に固定する方法などと比べると二重幅の調整が難しい、重瞼固定が緩む可能性があるなどのリスクがあります。どの程度の長さの眼窩隔膜を重瞼固定に使うのが適切かは、沢山の手術を経験して体感で身につけるしかない部分だと思います。

皮膚縫合

最後に所々で反転した眼窩隔膜もすくいながら皮膚と皮膚をナイロン糸で縫い合わせます。皮膚が薄く凹み目気味の人は皮膚縫合の際に眼窩脂肪を引き出して予定外重瞼線が出現しないようにすることもあります。

今回解説をしたのは初回手術における一般的な方法です。他院修正のケースや極端に広い二重や狭い二重を作成する場合には、重瞼固定の方法などを変えることもあります。

今回のコラムは、細かいことまで知らないと安心出来ない患者様が対象です。

なぜ飛行機が飛ぶのかを知らなくても飛行機に乗って目的地に着けるのと同じく、二重の内部処置の方法まで知らなくても希望の二重になるように適切な内部処理を行なって手術を行いますのでご安心ください。

副院長 黒田大樹

#:ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。