DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2023.12.22

目尻切開

目尻切開って効果無い?

Dr Kuroda

「目尻切開って効果が無いって本当ですか?」
「私は目尻切開をしたら効果ありますか?」
「目尻切開は後戻りするって聞きました」

など、目尻切開に関しての質問はネガティブな内容が多いように感じます。

今回は、目尻切開にネガティブな質問が多い謎に迫ります。

効果を感じられる目尻切開を行うためには3つ条件があります。

条件1)外側に隠れている眼球結膜(白目)があること
条件2)目尻が隠れていないこと
条件3)十分な上下方向への目の開きがあること

それぞれについて解説していきましょう。

条件1)外側に隠れている眼球結膜(白目)があること

大前提として目尻切開は隠れている白目以上には広げることが出来ません。目尻には円蓋部と呼ばれるポケット構造があり、そのポケットの深さは個人差があります。どれくらいポケットの深さがあるかは診察で分かりますが、自分自身で確認するのは難しいと思います。ポケットの深さが1ミリ以下では延長効果に乏しく手術適応がありません。3ミリ程度ポケットの深さがあればしっかりとした変化が出せます。

条件2)目尻が隠れていないこと

せっかく目尻が広がっても、そもそも目尻が隠れていたのではその効果を感じることが出来ません。一重まぶた、奥二重などで目尻が隠れている場合には、二重手術を先に行うべきです。目尻に余った皮膚が被さっている場合には、眉下切開などで被さっている皮膚を引き上げて目尻が見えるようにする方が先です。

条件3)充分な上下方向への目の開きがあること

目を閉じていると、目尻が延長されていても効果は分かりません。目尻の延長効果は充分な上下方向への目の開きがあるとハッキリします。目尻切開にグラマラスラインを併用して下眼瞼を下方向に広げると、お互いの手術が相乗効果を発揮するのは有名な話です。目の開きが弱い人の場合には眼瞼下垂手術を併用するのも効果的です。

条件1~3)の一つでも満たしていない項目がある場合は、目尻切開の効果は乏しい結果になります。目尻のポケットの深さは変えようがありませんが、条件2)と3)については手術で解決することが出来ます。

後戻りについては、残念ながら無くすことは出来ません。

しかし、後戻りの程度の多い少ないは手術手技の丁寧さが関わってきます。

延長された目尻の部分は皮膚と結膜を縫合することになります。縫合部にかかる緊張が強すぎたり、創部がピッタリと合っていなかったりすると後戻りの原因となります。ピッタリと創部が合っていない縫合は2次治癒という治り方をするので拘縮を起こして縮まります。皮膚と結膜を適切な緊張でピッタリと縫うことで、拘縮の少ない1次治癒を目指す必要があります。後戻りについては患者様の要因というより術者の技量によるところが大きいのです。

目を大きく見せる手術としては他にも、眼瞼下垂手術・グラマラスライン・目頭切開があります。これらの手術の効果は正面から見た際に変化量が分かります。一方、目尻は正面から見て斜めに位置していますので、目尻切開の延長方向は斜め後方です。これも目尻切開の延長効果が少なく感じる要因です。しかし実生活では常に正面から顔を見られるわけではありませんから、ちょっと斜めから見れば変化は感じるはずです。

最後に、目尻切開のモニター患者様の症例を紹介します。

この患者様の目尻のポケットの深さは約2ミリ強でした。術前から目尻は隠れておらず、目の開きも問題ありません。このように条件1~3)を満たしている人に適切な手術を行えば、正面から見ても延長効果が感じられる変化を出すことは可能です。

目尻切開は古典的な手術ですが、適応を見極めて丁寧に行えば効果は出ます。

ポケットが浅い場合には正直にその旨をお伝えするべきですし、条件2~3)を満たさない場合にはその改善策も提案するべきです。

美容外科医の中には効果が期待出来ない人に対しても、売上げの為に手術を行う者もいることでしょう。そのようなケースが少なく無いので、「目尻切開って効果が無い」という話がはびこるのだと思われます。

副院長:黒田大樹

#カウンセリングでよくある質問シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。

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