DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.03.22

その他

鼻のヒアルロン酸注入ってどうなの?

Dr Kuroda

ヒアルロン酸注入はダウンタイムが少なく手軽に受けられるため広く行われています。

「手術は怖いのでヒアルロン酸で鼻を高くしてください」
「ヒアルロン酸で鼻先をツンとさせたいです」

といったご相談も頂きます。

「鼻のヒアルロン酸注入って実際どうですか?」

と質問されることがありますので今回は私の考えをご説明します。

最初に結論から申し上げます。

・鼻背(鼻すじ)への注入はあり
・鼻先や鼻柱への注入は慎重に検討すべき

となります。

その理由を解説します。

効果的かどうかの問題

まず最初にご自身の鼻を上から下まで指で押してみてください。
上1/3はカチッとした鼻骨を触れますね。

そこから鼻先に向けて指を滑らすと鼻骨ほどではないけれど押しても簡単には沈まない土台があります。これは鼻中隔軟骨と外側鼻軟骨です。

鼻先まで行くとカチッとした組織はなくなり、自在に動く軟骨を触れます。この軟骨は鼻翼軟骨です。

次に親指と人差し指で鼻の皮膚を上から順に摘み上げてみましょう。

目と目の間の一番凹んでいるあたりは摘み上げられますね。ここは鼻の中で一番皮膚が厚い部分です。

少し下に行って、先ほど触れた鼻骨と軟骨の境界あたりの皮膚を摘み上げてみましょう。ここも摘み上げられます。ここは鼻の中で最も皮膚が薄い部分です。

最後に鼻先の皮膚です。今までの部位のように摘みあげることは難しいのではないでしょうか。皮膚の厚みが増して硬いのがわかると思います。

ヒアルロン酸に限った話ではないのですが、何かを移植して形を変化させる場合には土台がカチッとしていて皮膚が伸びやすい方が有利です。

つまり鼻背(鼻すじ)はヒアルロン酸注入で変化を出しやすい一方で、鼻先は変化が出しにくいと言えます。

耳介軟骨軟骨移植で効果があるなら硬いヒアルロン酸を注入すれば鼻先にも変化が出せるのでは?

という疑問を感じる人もいるかもしれません。

しかし、手術で軟骨を移植するのとヒアルロン酸を注入するのでは決定的な違いがあります。

鼻先の皮膚(正確には皮下の組織群)は、鼻先の軟骨としっかりとくっついているのです。

手術では皮膚と軟骨を剥がすことで、皮膚に変化させる伸び代を作っています。

ですが、ヒアルロン酸注入ではその操作は出来ませんから、硬いヒアルロン酸を注入しても手術と同じ結果にはなりません。

安全性の問題

鼻の皮膚は、上から順に皮膚、表在脂肪層、線維筋層、深部脂肪層、軟骨膜と5層構造になっています。手術の場合には、目的によってどの層で剥離するかを決めています。

鼻先のような厚い組織にヒアルロン酸で変化を出すのであれば浅め~中間層に注入したくなります。しかし浅め~中間層には鼻の皮膚を栄養する血管が走行しており、ヒアルロン酸が誤って血管内に注入されてしまうリスクが高まります。軟骨膜上付近に注入する分にはリスクは低いと思いますが、ツンとさせるには効果が弱くなってしまいます。

鼻柱の皮膚は柔らかいのでヒアルロン酸注入で変化を出せる部位ですが、鼻柱には鼻柱動脈が走行しています。オープン法で手術をする際に必ず出くわす動脈ですが、血管走行にはバリエーションがあるため皮膚表面からはどこが安全なのかはわかりません。

鼻先や鼻柱についてはヒアルロン酸による血行障害が原因の皮膚壊死という重大な合併症が生じるリスクが常にある部位と言えます。鼻先へのヒアルロン酸注入はリスクが高い割にメリットが少ないと言えます。

鼻背では正中から逸れずに注入すれば血管内に注入してしまうリスクはほぼ避けることが可能です。

以上のような理由から、

・鼻背(鼻すじ)への注入はあり
・鼻先や鼻柱への注入は慎重に検討すべき

と考えています。

鼻にヒアルロン酸を注入するのであれば、鼻の手術を日常的に行っていて鼻の層構造を針先の感触からイメージできる医師にお願いする方が安全性は高いと思います。

ヒアルロン酸による皮膚の血行障害血が生じてしまった場合には早期発見と処置が大切になります。早期発見は皮膚の色調のわずかな変化を見流さない観察力と経験が必要です。ヒアルロン酸注入は手軽に受けられるいわゆるプチ整形ですが、安心して任せられる医師に依頼することが大切です。

副院長 黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。