DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.03.15

鼻中隔延長

鼻中隔延長って必要?

Dr Kuroda

「鼻中隔延長はやりたくありません」
「鼻中隔延長で鼻先を長くしてツンとした鼻にしてください」

など、鼻中隔延長をやるやらないを事前に患者様が決心して相談に来られるケースが多いです。

患者様にとって鼻中隔延長は

・鼻先を長くする手術
・ツンと尖らせる手術
・術後に曲がってくる手術
・大掛かりな手術

といったイメージがあるようです。

これらのイメージは正しいようで一部の側面のみを捉えていると言えます。

鼻中隔とは

鼻中隔は鼻の真ん中にあり鼻すじを支えつつ鼻腔を左右に分ける役割をしています。

鼻中隔は軟骨と骨と膜組織で構成されていて、鼻中隔延長で操作するのは主に軟骨部分です。

採取した鼻中隔軟骨や耳介軟骨や肋軟骨を鼻中隔軟骨に継ぎ足しする操作が鼻中隔延長です。

前回のコラムでも触れましたが、鼻の皮膚は手術後6ヶ月ほどは元の状態に戻ろうとする力が働きます。皮膚自体が短くなろう、低くなろうとするのです。ですから、その力に長期的に耐えうるフレームを作成することが手術を成功させるポイントとなります。出来るだけカチッとした、動きの少ないフレームが鼻先の形を変化させ維持する上で必要なのです。

ここで問題となるのは、鼻先というのはある程度の動きがあるものだという事です。

鼻は顔の中心にあって触れたりぶつかったりと外力を受けやすいので、カチカチに硬いよりは柔らかくて動くほうが外力を受け流すのに有利です。また、笑ったりなどの表情に伴って鼻先に動きが出るのも、鼻先にある程度の柔らかさがあるからと言えます。

左右の鼻の穴からそっと指を入れてみると正中に少し硬い板のような軟骨を触れると思います。これが鼻中隔軟骨です。触ってみるとわかりますが、鼻中隔軟骨の先端は鼻先までは届いていません。鼻先の形を作っている鼻翼軟骨は鼻中隔軟骨と直接的には繋がっておらず、ですから鼻先は上下左右に動かすことが出来ます。

手術を成功させるポイントとなる

「皮膚の戻る力に耐えうる出来るだけカチッとしたフレーム」

を作成することを考えます。

鼻先を構成する組織の中で最も動きの少ない組織が鼻中隔軟骨です。鼻骨や上顎骨の方がよりカチッとした組織ですが鼻先から遠すぎるので手術で利用するには無理があります。

鼻中隔延長とは

鼻中隔延長とは

「鼻先にカチッとした動きの少ない足場を組む」

手術であり、その目的は

「鼻先の動きはある程度犠牲にしつつも、決めた鼻先の位置が皮膚の低く短くなろうとする力に耐えるようにすること」

なのです。

では、全ての患者様に鼻中隔延長は必須か?と言われるとそうでもありません。

建築をする際に、平屋の家を建てるのと高層階を建てるのでは求められる基礎工事が違うのと同じです。

フレームとなる鼻翼軟骨の大きさや硬さ、それを覆う皮膚の厚みや柔らかさは千差万別です。

皮膚が硬すぎず、鼻翼軟骨が小さくなくて、鼻中隔軟骨が短くないケースであれば、鼻中隔延長をせずとも皮膚の戻る力に負けないフレームを作ることは可能です。

皮膚の伸びが悪い、鼻翼軟骨が小さい、鼻中隔軟骨が短いケースでは、鼻中隔延長で足場を組まないと皮膚の戻る力に負けてしまいます。

鼻を長くする目的やツンと尖らせる目的では強固なフレームが必要ですから鼻中隔延長が結果的に用いられることが多いだけで、皮膚や軟骨の条件によってはマイルドな変化であっても鼻中隔延長が必要なこともあります。逆に、条件がよければ鼻中隔延長を用いなくても、大きな変化を出すことも可能です。

確かに鼻中隔延長は大掛かりな手術ではありますし費用も安くありません。

無理な延長をすれば、皮膚の戻る力に負けて曲がってくるリスクもあります。

なんでもかんでも鼻中隔延長を適用するのは一考の余地があるでしょう。

まとめ

カウンセリングでは患者様の希望の鼻の形をヒアリングした上で、皮膚や軟骨の条件を照らし合わせて必要な術式を提案しています。鼻中隔延長を避けたいと考えている患者様には極力希望に沿うような提案をするよう努めていますが、それでも鼻中隔延長を提案せざるを得ないケースもございます。

自分の鼻はどうなのか?は、患者様自身で判断することは難しいですからカウンセリングでご相談頂ければしっかりと説明いたします。

副院長 黒田大樹

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この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。