DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.02.09

その他

まぶたが腫れていても手術は出来る?

Dr Kuroda

「私はまぶたが腫れやすくて。もし、手術当日にまぶたが腫れていても手術は出来ますか?」

春や秋の手術を検討している患者様から時々いただく質問です。

手術当日ではなく、カウンセリングの時にまぶたが腫れている患者様もいらっしゃいます。

まぶたが腫れてしまう原因は様々です。一例を挙げると

・花粉症などのアレルギー
・アトピー性皮膚炎
・アイプチなどによる接触性皮膚炎
・軟膏や化粧品などによる薬剤性のかぶれ
・蕁麻疹など原因不明なもの

などなど。

手術当日にまぶたが腫れていると何が不都合になるのでしょうか?

シミュレーションの精度が落ちる

 カウンセリングや手術前にはブジーという針金のような棒をまぶたに押し当てて術後の仕上がりのシミュレーションをします。そこで出来た二重の形を患者様と医師の間で共有することで仕上がりを担保します。まぶたが腫れた状態でシミュレーションをすると、腫れていない状態の時に比べてプックリとした幅広の二重に見えてしまいます。

手術の難易度が増す

 まぶたが浮腫んだ状態で手術をすると、二重幅や食い込みの具合の調整が難しくなります。浮腫みが強い時には皮膚は厚ぼったくなるため二つ折りに畳まれにくくなります。そのため丁度良い二重作成をしても、二重ラインで折りたたまれずに予定外重瞼線(いわゆる三重)が生じたり、二重の食い込みが浅くなったりします。 

 まぶたが浮腫んでいる時は皮膚の毛細血管が拡張し血液成分が組織に漏れ出ている状態です。通常の時に比べると出血が多く、手術操作が難しくなったり術後の内出血が強く出る可能性もあります。

手術当日にまぶたが腫れないように出来る対策としては

・アイプチなどの使用を手術前の1週間程度は控える
・手術前は疲労やストレスが溜まらないよう心がける
・しっかり睡眠をとってコンディションを整える
・花粉症などのアレルギーがある場合は、抗ヒスタミン薬の服用をする
・スケジュール調整が可能であれば、まぶたが腫れやすいシーズンの手術予定を避ける

などが挙げられます。

これらの対策で腫れを完全に防げる訳ではありませんが、これだけ対策をしても当日腫れてしまった場合には執刀医としては諦めがつきます。

手術当日にまぶたが腫れてしまった際には先ずまぶたの状態を診察いたします。腫れが強い場合には手術の延期を検討することになりますが、手術に向けてスケジュールのやりくりをしている都合で患者様が手術の強行を希望されることが多いです。

腫れた状態のまぶたに手術を行う場合には、カウンセリングでシミュレーションをした時のカルテ記載を参照にして、腫れを考慮したデザインを行います。二重幅や食い込みの内部処理の調整は経験を頼りに行いますので 、ダウンタイムが経過した後に不具合があるようであれば修正で対応をすることになります。

ここで、手術当日にまぶたが腫れてしまっていたモニター患者様の経過をご紹介します。

写真では伝わりにくいですが、手術当日は花粉症の影響でカウンセリングの際よりまぶたが腫れている状態でした。1ヶ月後の状態と比べると、皮膚がパツパツしているのが伝わりますでしょうか?1ヶ月後の状態は全く問題はないのですが、術後経過には紆余曲折がありました。

手術直後の状態です。まぶたの浮腫によって二重ラインで皮膚が折り畳まれにくく、適切な二重内部処置をしたつもりですが二重ラインがまるで引き込まれていません。

術後1週間の抜糸直後の状態です。手術直後に比べて二重ラインでの食い込みは改善していますが、腫れの影響が残っており二重幅の左右差が気になります。しかし、1ヶ月経過して花粉シーズンの終焉とともに腫れが引くと1枚目の写真のように綺麗な左右対称の二重に落ち着きました。

手術当日にまぶたが腫れていてもこの症例のように最終的に良い状態に落ち着くこともありますが、やはり腫れのないまぶたに行う手術に比べると確実性は落ちます。

このような訳で最初の質問のお答えとしては、

「手術は出来るが、まぶたが腫れないようコンディションは整えて頂けると助かります」

ということになります。

副院長 黒田大樹

#カウンセリングでよくある質問シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。