DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2023.10.20

耳介軟骨移植

耳介軟骨移植について

Dr Kuroda

今回は私が行っている耳介軟骨移植について解説します。

耳介軟骨移植は、耳の裏側を切開して耳の軟骨を採取し鼻先に移植する手術です。

ダウンタイムが短く合併症も少ないので、あまり大きな手術をしたくない方やリスクを極力取りたくない方に人気の施術です。

手術は局所麻酔で行うことが多いですが、不安が強い方は静脈麻酔で行うことも可能です。

基本的にはクローズ法で行うので鼻の露出部位に傷跡は残りません。ギプスは不要で1週間後に耳と鼻腔内の抜糸を行います。

抜糸後は鼻の皮膚が若干浮腫んでいますが、マスクで隠さなくてはいけない程ではありません。1ヶ月程度で浮腫みが引き、鼻尖の変化がはっきりとしてきます。平均して2~3ミリの変化が期待できます。

耳介軟骨移植は変化が出やすい人とそうでない人がいます。
耳介軟骨移植で変化をしっかりと出すためには

・鼻の皮膚の柔らかさ
・鼻翼軟骨の強度

の2つが重要です。

鼻の皮膚の柔らかさ

鼻先の皮膚の伸展性が良いと移植軟骨による変化が出やすいです。

鼻先の手術の既往などで皮膚が硬く伸びにくい人は、耳介軟骨移植ではなく鼻中隔延長で皮膚の硬さに負けない土台を作る必要があります。そうは言っても、よほど鼻先の皮膚が硬くない限りは耳介軟骨でも変化を出すことが可能です。

鼻翼軟骨の強度

移植する軟骨は、鼻翼軟骨という鼻先の軟骨の上に置いてくる形になります。いわば建物の基礎とも言える土台の軟骨の強度が強ければ、変化も出易く後戻りも少なくなります。鼻先を指で押した際に簡単にペチャっと潰れる鼻に耳介軟骨移植を行っても、皮膚や移植軟骨の重みを支えられずに潰れてしまう為に満足する結果を残せません。

耳介軟骨移植はシンプルな手術ですが、安定した結果を出すために工夫をしています。工夫の一部をご紹介します。

工夫①)移植軟骨を糸で誘導

耳介軟骨移植クローズ法では、加工した耳介軟骨を鼻腔内の切開から鼻先に差し込んで移植します。鼻先のどの部位を延長するのかは移植した軟骨の位置で決まります。

一般的な方法ではブラインド操作といって、おおよそこの辺りというところに軟骨を挿入しておしまいです。しかしこの方法では、移植した軟骨が微妙に上下左右にずれてしまうリスクがあります。

私が行う手術では鼻先を正確に延長するために、鼻腔内から鼻先に糸を通して移植軟骨を狙った位置に誘導しています。

工夫②)土台となる鼻翼軟骨の補強

土台となる鼻翼軟骨の強度があるほど変化が出し易いのは前述の通りです。私は鼻翼軟骨の強度が弱い人でも変化が出せるよう細工を加えています。鼻翼軟骨の沈み込みやすい部位を糸で縫い寄せたり、支柱となる軟骨を移植をするなどして補強します。クローズ法の狭い術野で狙った箇所に糸を通すのはなかなか難しいですし、糸を通す部位によってはアップノーズになってしまうので、鼻翼軟骨のどこを補強するかを見極める必要があります。

オープン法で鼻尖形成をする場合には多くの医師が行っている方法ですが、クローズ法の耳介軟膏移植のみの手術でここまで手間をかけている医師は少数派だと思います。

他にも、移植する耳介軟骨のサイズや加工、鼻尖の皮下の剥離する深さなどは患者様の鼻の状態に応じて変えています。

最後に実際の症例をご紹介します。

耳介軟骨移植で鼻先の高さを出した症例です。皮膚が柔らかい人ではこのくらいの変化が期待できます。

こちらも鼻先の高さを出した症例です。土台の鼻翼軟骨を補強することで、単純な耳介軟骨移植に比べてしっかりと変化を出すことが出来ています。

短鼻傾向の方で、鼻尖の長さを出すように耳介軟骨移植を行いました。耳介軟骨移植は高さを出すことに比べて長さを出すことは難しいです。耳介軟骨移植クローズ法単独でここまで鼻尖を下げるには、相応の工夫が必要になります。これ以上の変化をご希望であれば、鼻中隔延長の適応となります。

耳介軟骨移植クローズ法はシンプルながら奥深い手術で、術者の隠れた一手間で結果に差が出ます。私は鼻中隔延長や骨切りなどいわゆる鼻フルも行っていますが、患者様に負担の少ない方法として耳介軟骨移植クローズ法には並々ならぬこだわりを持って施術しております。

副院長 黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。