2024.01.26
その他
術後の検診って必要?
「術後の検診は来なくてはダメですか?」
「抜糸は地元のクリニックでしてもらっても良いですか?」
といったご質問を頂くことがあります。
特に遠方から来て下さっている患者様にとっては、術後経過が良好であれば時間と交通費をかけてわざわざクリニックに通うのは億劫なことかと思います。
抜糸以降はフォローアップ検診は行わずに「何か気になる点があれば来てください」でおしまいにしているクリニックもあります。
術後検診はクリニック経営にとっては売り上げに直結しない割の合わない業務です。検診に割く時間をカウンセリングや手術に回した方が、経営効率は良いですし沢山の患者様を診察することが出来ます。
医師にとって検診は患者様からクレームやお叱りを頂くこともありストレスのかかる業務でもあります。何を言われてもへっちゃらという鉄の心臓を持ち合わせている医師もおりますが、手術結果が思わしくない時は患者様と同様に執刀医も苦しい思いをすることになります。
しかしながら術後の検診は必要であると私は考えています。
治療の成否は経過を見なくては判断が出来ないからです。
検診をしない医師は、テストを受けて結果を確認しないのと同じです。
外科医にとって検診で経過を確認することは、自分の技術や知識を向上させる為には欠かせません。
例えば、切開二重を受ける患者様の大半は「まつ毛の生え際が綺麗に見えるように」と希望されます。目頭側から目尻側まで綺麗にまつ毛の生え際が見えるような二重を安定して作成することは簡単なことではありません。患者様によって希望の二重幅も異なりますし、皮膚の厚みや目の開きも違います。手術直後と術後3ヶ月経過した状態の写真を見比べて、手術直後にこの状態だと3ヶ月後にはこの状態になる、という確認を愚直に積み重ねて真摯に自分の手術を再評価することでしか身につかない技術です。これは教科書や論文を読んで身につけるものではなく、手と目に覚えさせるアートの部分になります。
検診で患者様から頂く感想や感謝の言葉がモチベーションを保つ源になります。また、患者様から頂くお叱りや指摘が、治療をより良く改善させていく気付きやヒントになります。
患者様にとっても検診を受診することは、術後に感じる疑問点を執刀医に直接質問できる場ですし、自分では気が付かないようなちょっとした不具合を見つけてもらえる機会でもあります。
以前のコラムでウインクと食い込みについて解説しました( https://ro-clinic.com/doctors_column/9383/ )。術後の二重ラインは鏡でウインクしながら確認しようとすると食い込みが強い状態に見えますよ、というお話でした。そのような患者様には自然に両目を閉じた状態での二重ラインの見え方を動画に撮ってお見せすることで悩みが解決することもあります。検診に来なければ、他院で不必要な傷跡修正の手術を受けていたかも知れません。
逆に、私の方から術後の上手くいっていない点を指摘して修正手術を促すケースもあります。業界的には、患者様が気にしていない点や気がついていない不具合を指摘することはタブーとされています。もちろんごく僅かの左右差などで患者様が気にしていない点をわざわざ指摘して悩みを深めるようなことはするべきではありません。しかし、ちょっとした修正をすることで80点の手術が90点になるものであれば、患者様が気がついていない点であっても正直にお伝えした方が良いと考えています。その上で、再びダウンタイムをとって修正するのか現状のままで良しとするのかは、患者様が決めて頂ければと思います。
経過に問題がなく患者様も手術結果に満足して頂いているケースでは検診は不要でしょうか?検診でその状態を写真やカルテの所見として客観的に記録しておくことは、将来的に何か気になる点が出てきた際にも判断材料となりますのでやはり検診に来て頂くことは無駄ではありません。
どのような手術でも出来れば3ヶ月の検診は来ていただくのが良いと思います。手術内容によっては必要に応じて、6ヶ月や1年の検診に来て頂くこともございます。
検診で術後結果に満足して頂きフォローアップが終了となる患者様には、「今後何か不具合や気になる点があるようであれば何年経過していても検診に来てください」とお伝えするようにしています。私が美容外科医として現役である限りは、手術を担当させて頂いた責任はいつまでもあると考えているからです。
美容外科医という世間から白い目で見られることもある職業だからこそ、売り上げにならないことこそ大切に丁寧にやっていくべきだと考えています。
副院長 黒田大樹
#美容外科よもやま話シリーズ
この記事の監修者
副院長
黒田 大樹
OHKI KURODA