DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2023.10.13

蒙古襞形成

目頭切開

目頭切開の傷跡

Dr Kuroda

当院は蒙古ひだ形成の症例数が多く、必然的に目頭切開後の傷跡を見る機会も多くあります。患者様の悩みを伺っていると、目頭の形だけでなく目頭切開の傷跡に悩んでいる方もかなり多いと感じます。

何故、目頭切開の傷跡が目立ってしまうケースがあるのでしょうか?

先ず大前提として
「そもそも目頭は傷跡が目立ちやすい部位である」
という事実があります。

さらに目頭は顔の中心にあり、瞼を開けていても閉じていても傷跡は隠れません。

目頭切開の傷跡が目立つ原因を考えてみます。

①デザインエラー

目頭切開は様々な方法が発表されていますが、美容整形においてはZ形成術かリドレーピング法が主流です。私は患者様の蒙古ひだの形状や希望の目頭の形に合わせて、上記の術式を使い分けています。

一般の方向けのコラムなのでデザインの詳細については解説しませんが、傷跡が短くなる様にする、傷跡が皮膚のしわや二重ラインに紛れるようにするといった工夫が必要です。

蒙古ひだと涙丘の形は千差万別ですし、希望する形も人によって違いますから、デザインの基本を押さえつつも症例ごとに微妙な味付けが必要になります。

画一的なデザインで行なっていると、傷跡が目立ってしまうケースが出てきてしまいます。

②皮下組織の扱い

傷跡の緊張が少ないほど傷は綺麗に治るので、手術では皮下のツッパリを解除してスムーズに蒙古ひだの形が変わるようにする必要があります。

皮膚の下には眼輪筋があり、皮膚と密着しています。

皮膚のツッパリは解除しつつも眼輪筋へのダメージを最小限にして、皮下に余計な瘢痕を作らない配慮が綺麗な仕上がりには欠かせません。

③縫合技術

目頭切開は細かい手術です。小さな組織を繊細に縫合する技術が求められます。皮膚に余計なダメージを与えない、皮膚をピッタリと合わせるという形成外科的な配慮が必要です。

形成外科医は若手の頃、組織への愛護的な扱いを叩き込まれます。皮膚はピンセットで持つな!余計な出血はさせるな!組織と会話しろ!など耳にタコができるほど指導されます。

救急外来で、必死に抵抗する子供の顔のケガを綺麗に縫合することから始まり、果ては1ミリ以下の血管やリンパ管を繋ぎ合わせられる様になるまで修行を重ねます。技術は簡単に身につくものでないので、しっかりとした縫合技術を身につけるのにはある程度の年月が必要です。

美容外科医は誰でも名乗れるので、手術を任せる医師に確かな縫合技術があるかを見極める必要があります。見極めるといっても患者様からすれば確かめる術はないのですが、形成外科専門医を持っていれば最低限度の縫合技術は担保されていると考えて良いと思います。因みに形成外科専門医を持っていれば美容手術も上手かどうかはまた別の話です。さらに言えば、形成外科専門医を持っていなくても手術の上手な先生はいらっしゃいます。

④肌質

こんなことを言っては元も子もないのですが、傷の治りには個人差があります。色白で皮膚の薄い人は傷跡が綺麗に治り易いですし、色黒で皮膚が厚く脂性肌の人は傷跡が目立ち易い傾向があります。どんなに手を尽くしても、傷跡が目立ってしまうケースもあります。

私の場合、患者様の肌質によっては傷跡のリスクをよりしっかりと説明しています。

不幸にも傷跡が目立ってしまった場合にはどうすれば良いでしょう。
まずは慌てずに待つことが大切です。

傷跡は最初赤くて硬いですが、時間をかけて次第に目立たなくなっていきます。順調な経過であれば3ヶ月程度でかなり目立たなくなりますが、半年後、1年後の方がさらに傷跡は目立たなくなります。傷跡に赤みが残る場合には、紫外線を浴びると色素沈着することがあるので、紫外線予防も心がけましょう。

フラクショナルレーザーなどの治療は、傷跡をぼかす効果があるので傷跡が気になる方には有効な治療法です。傷跡は細いけれど白浮きして悩んでいる様なケースでは5~6回の照射でかなり改善が見込めます。

傷跡が目立つケースでは、傷跡を切除して再縫合したり、皮下の瘢痕を丁寧に剥離することで改善出来ることがあります。

こちらは蒙古ひだ形成VY法を行った症例です。目頭に縦に走る目立つ傷跡があります。蒙古ひだ形成をする際に傷跡の瘢痕を皮下で丁寧に剥がすことで、傷跡はかなり目立たなくなりました。

繰り返し手術を受けた症例や手術操作が雑な症例では目頭に凹みが残ってしまうケースがあります。凹みの目立つ場合には、皮下の瘢痕を解除して脂肪注入をすると改善します。状態によっては、複数回の脂肪注入が必要となることもあります。

こちらの症例は複数回の目頭切開を受けており、皮下の瘢痕剥離と脂肪注入を1回行った5ヶ月後の状態です。傷跡の凹みが浅くなり肌の色調も改善しています。

今回は目頭切開の傷跡が目立つ原因とその治療について説明しました。

当院では蒙古ひだ形成も傷跡の修正も行うからこそ、自分たちが行う目頭切開では目立つ傷跡を作らないように日々気をつけて施術を行っています。

副院長 黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。