DOCTOR'S COLUMNドクターズコラム

2024.11.15

二重切開

上まぶたたるみ切除

二重埋没

埋没法の二重切開手術への影響

Dr Kuroda

久しぶりのコラム執筆となります。

今回のテーマは

「埋没法の既往がある瞼では二重切開の手術をする際にどのような影響があるのか」

です。

マニアックな内容なので、一般の方向けというよりはこれから瞼の手術を学んでいこうとしている若手の先生向けの内容かも知れません。悪しからず。

患者様から

「埋没法は何回できますか?」
「埋没法をしていると二重切開はやりにくくなりますか?」

とか聞かれることもあるので、難しい内容ですが興味のある方はご覧ください。

埋没法は低侵襲な手術ですが、それでも皮膚の下に瘢痕が生じます。

繰り返し埋没法を受けているケースでは、瘢痕が強いので手術操作が難しくなります。

埋没法の術式によって瞼への影響が異なります。

瞼板法の場合

眼輪筋と瞼板上の組織の間に癒着が生じています。線固定やループ固定では抜去が容易ですが、点固定では糸が瞼板スレスレに埋もれていることが多く、無理に糸を除去しようとすると瞼板と挙筋腱膜の結合が緩んでしまって手術操作で眼瞼下垂を作ってしまうリスクがあります。

表面から透けずに埋もれている糸は無理に抜去する必要はありませんが、埋没法で作成した二重ラインで睫毛の生え際が隠れている場合には慎重に抜去します。

睫毛の生え際を綺麗に出すためには睫毛上のもたついている組織を頭側に引き込みたいので、瞼板上の埋没糸による癒着が抵抗となるからです。

挙筋法の場合

挙筋法は糸を緩く結ぶので皮下に長く緩い糸が残ります。ですから切開をした際に糸を見つけるのは比較的容易です。糸の結び目が複数あったり、複数の糸を絡ませている術式では抜去しにくいケースがあります。

挙筋法の場合には眼瞼挙筋腱膜から眼窩隔膜が折り返すあたりに癒着を作ることがあります。このあたりに瘢痕が強いと重瞼固定源の柔軟性が乏しいため、重瞼作成を行う際に微調整が難しく感じることがあります。

埋没法を複数回受けても二重が安定せずに切開法を選択する症例では、眼窩隔膜が多重層で厚かったり下横走靱帯が発達していて組織の展開が難しいケースが多いので、挙筋法による瘢痕が手術の難易度をさらに上げます。

埋没法によるマイクロ脱脂をされている場合

通常は眼窩隔膜越しに透見できる眼窩脂肪を確認しながら眼窩隔膜を開放することで、安全に挙筋腱膜に達することが出来ます。しかし、マイクロ脱脂がされている瞼は眼窩脂肪が乏しく展開の難易度が上がります。慣れていないと組織の見分けが難しく、挙筋腱膜を損傷してしまう可能性があります。通常は外側の眼窩脂肪が豊富なのですが、このようなケースでは内側の眼窩脂肪の方が取り残されていて発見しやすいことが多いです。

裏どめをされているケース

裏どめをされた糸玉はミュラー筋周囲に埋もれています。裏どめの場合には通常の二重切開の過程では埋没糸を抜去することができません。

裏どめをされているケースで最も影響を受けるのは眼瞼下垂の手術をする時です。挙筋腱膜とミュラー筋の間を剥離するときに邪魔になります。

通常は瞼板を尾側に牽引しつつ挙筋腱膜を手前に引っ張れば、挙筋腱膜とミュラー筋の間はスムーズに展開できます。ですが、裏どめをされているケースでは挙筋腱膜とミュラー筋の剥離が難しくなります。剥離の過程で挙筋腱膜に穴が開いてしまったり、ミュラー筋からの出血による腫れで目の開きの調整が難しくなったりします。

私が二重切開を執刀する際には

・何回埋没法を受けているのか?
・どこのクリニックで埋没法を受けているのか?(クリニックによって皮下の瘢痕の状態に傾向があるので)
・埋没法の際に眼窩脂肪の除去を行なっているか?

など、患者様の埋没法の既往を正確に把握するように努めています。

埋没法による影響を予想しつつ手術操作を行うことで、より安全にスムーズな手術を行うことができると考えています。

副院長 黒田大樹

#ドクターKの深掘り解説シリーズ

この記事の監修者

副院長

黒田 大樹

OHKI KURODA

2005年に信州大学医学部を卒業し2年間の初期研修医を修了後、形成外科医局として全国で最大規模の昭和大学形成外科に入局。形成外科医として11年間研鑽を積んだ後に、美容外科を専門として現在に至る。