2024.06.28
その他
医療漫画の思い出
前回のドクターズコラムで無事に第一章の最終回を迎えました。日々の診療に役立つであろう内容でコラムをお届けしていましたが、第二章の再開までの息抜きに全く役に立たない内容のコラムを書いてみました。お目汚しでございますが、興味のある方だけ読んで頂ければ幸いです。
皆さんは漫画を読みますか?日本の漫画は今や世界に誇るコンテンツです。子供の頃ほどではありませんが、アラフィフになった今でも私は漫画を読みます。
医療を題材にした漫画は今も昔も沢山出版されています。私が触れてきた医療漫画で印象に残っている作品をご紹介したいと思います。
スーパードクターK
真船一雄氏によって1988年から連載されていた漫画です。私が中学~高校生の頃に愛読していた最初の医療漫画です。キャッチコピーは「ハードボイルド医学伝説」。天才的な頭脳と神技の手術技術、野獣の肉体を持つ主人公KAZUYAがあらゆる難治症例を解決していく内容です。
兎にも角にも少年誌とは思えないハードボイルドな作画が最高なのです。主人公の医療技術が飛び抜けているのはもちろん、とにかく凄いのがその肉体です。北斗の拳のケンシロウばりの肉体を持っています。その肉体は見せかけだけでなく、地震で崩れゆく建物を支えるなど人間の域を超えています。
医療行為も次第にエスカレートして、プリマドンナのヘルニアを治療するために無重力の宇宙空間で手術をするほどの超絶展開を魅せてくれます。このように書くと荒唐無稽なギャグ漫画のように感じるかもしれませんが、医療監修が入っているので医学的にも破綻の無いようになっています。近頃の医療漫画の主人公には無い完全無欠な感じが当時の少年誌の漫画っぽくて良きです。
きらきらひかる
郷田マモラ氏により1995年から連載された漫画です。この漫画の主人公は天野ひかるという法医学教室に所属する監察医です。事件や事故などに巻き込まれたご遺体の解剖を通じて、その背景にある人間ドラマを描いていく内容となっています。郷田マモラ氏の作画がウマ下手というか独特のタッチなのです。雰囲気としてはじゃりン子チエのような大阪の下町の匂いが紙面から漂うような画風です。ご遺体の最後の声を聞くことを信念とした主人公の真っ直ぐな心と、ご遺体の背景にある悲喜交々な人間ドラマに心揺さぶられる作品となっています。法医学的な内容もかなり専門的で、この漫画を読んでいたお陰で医学生の頃の法医学のテストは楽々パス出来ました。
Dr.コトー診療所
山田貴敏氏によって2000年から連載された漫画です。2010年以降は長期休載中となっています。テレビドラマ化もされているので、漫画を読んだことがなくても作品に触れたことがある方も多いと思います。
コトー先生こと五島健助が主人公で、古志木島という離島の診療所での活躍を描いています。僻地医療の難しさをメインテーマにしつつ、最初は外様として警戒されていた主人公が次第に島民の信頼を得ていくストーリーです。この漫画をきっかけに僻地医療を志した医療者も多いことでしょう。コトー先生の実直で素朴な人柄と天才的な外科手技のギャップがたまらない漫画です。テレビドラマも最高なので、いつかロケ地の与那国島に聖地巡礼に行きたいと思っています。
ブラックジャックによろしく
佐藤秀峰氏により2002年から連載された漫画です。年配のドクターは手塚治虫氏のブラックジャックに影響を受けた人が多いかと思いますが、私にとってのブラックジャック~といえば最初に思い浮かぶのはこちらの漫画です。
主人公の斉藤英二郎は名門大学病院に勤務する初期研修医で彼に特別な技術や知識はありません。ですが、英二郎はとにかく患者想いで純粋で畏れ知らずなのです。
医療現場にある様々な矛盾や理不尽さ、そこに英二郎は真正面から立ち向かっていきます。診療科をローテーションする研修医の設定が生かされていて、外科→内科→NICU→小児科→外科(がん治療)→精神科→臓器移植編と続きます。どのエピソードも考えさせられる内容ですが、がん治療編が個人的にはおすすめです。ヒロインのNICUナースの皆川さんが可愛いのですが、主人公が変人なので振り回されて可哀想です。妻夫木聡さん主演でドラマにもなっていますが、ドラマでは描き切れていない内容が多いので触れるなら是非漫画で。
コウノドリ
鈴ノ木ユウ氏により2012年から連載された漫画です。産科医療を取り巻く様々な人間ドラマや社会問題をテーマに展開されていきます。主人公の鴻鳥サクラ(こうのとりサクラ)は、産婦人科医であると同時に謎のジャズピアニスト「ベイビー」でもあります。「ベイビー」の時は金髪のウィッグに口紅とかなり振り切れた風貌になりますが、普段のサクラ先生は温厚で思慮深く、凄腕の産婦人科医です。現実世界にも医師でありつつ、その他の職業でも才能を発揮する人は結構いらっしゃいますよね。サクラ先生もそんな二刀流のお一人です。
産科というジャンルでどれほど描き進められるのかな?と思いながら連載を楽しんでいましたがネタ切れすることなく32巻まで続きました。凄い。妊婦とその家族が直面するかもしれない様々な問題を、真摯に真正面から描いている名作なので、男女問わずに読んでもらいたい名作です。過酷な労働環境から近年は産科希望の学生が激減していますが、産科医は本当に報われてほしいです。(美容外科医が言うなというツッコミは無しで)。
リエゾン
ヨンチャン氏により2020年から現在も連載中の児童精神科を舞台にした漫画です。主人公は児童精神科医である佐山卓と、児童精神科の研修医の遠野志保の二人です。佐山自身もASD (自閉スペクトラム症)の既往があり、遠野もADHD(注意欠陥多動性障害)なのです。
児童精神科をテーマにしているので、内容はとても重く読後の爽快感はありません。決して楽しい漫画ではないのですが、心の凸凹がある人たちがどのような現実に直面しているのか、多くの人に読んでもらいたい漫画です。本作の主人公たちもそれぞれASDとADHDを抱えていますが、医師ってその気質を持った人達が多いですよね。そのあたりが妙にリアルだなって思います。
今回ご紹介した作品の中に、皆さんのお気に入りの漫画もありましたでしょうか?近年の医療漫画は薬剤師や病理医が主人公になるなど、より狭いジャンルで深掘りするものが増えてきました。美容外科を扱った漫画もありますね。医療漫画という描き尽くされたように思えるジャンルであっても、新たな切り口で作品を生み出す作家さん達は本当にすごいと思います。
副院長 黒田大樹
#番外編
この記事の監修者
副院長
黒田 大樹
OHKI KURODA